解体の日取りが決まった。近所への挨拶は、いつ、誰が、どこまで回ればいいのか。
先に結論です。近所への挨拶そのものは、法律で決められた義務ではありません。ただし解体工事には、法律が届け出を求めている手続きが2つあって、その中身が、挨拶で伝えるべきことと重なります。
解体や下地の現場に見習いで入っていたおさむが、粗品を選ぶ前に決めておく順番を中立にまとめます。
根拠にしたのは、e-Gov法令検索で読んだ騒音規制法と建設リサイクル法の条文です(騒音規制法は2026年9月22日、建設リサイクル法は2026年9月9日に確認)。
まず、回るのは業者か、施主か
多くの場合、業者が近隣を回ります。工事の内容を説明できるのは業者だからです。
ただ、そのあと何年も隣で暮らすのは施主のほうです。業者だけに任せると、工事が終わったあとに残るのは施主と近隣の関係だけ、ということが起こります。
先に業者へ聞いておくことは3つです。誰が回るのか。いつ回るのか。施主も一緒に回れるか。
一緒に回ると決めたら、日程を業者の都合に合わせます。業者は届け出の日程で動いているので、そこから逆算するのがいちばん早いからです。
法律が業者に出させている紙が2つあります
挨拶で何を話すかは、この2つを見ると決まります。

① 騒音規制法の届出(出すのは業者)
騒音規制法の第14条は、指定された地域で特定建設作業を伴う工事をしようとする者に対して、作業を始める日の7日前までに市町村長へ届け出ることを求めています。
特定建設作業というのは、建設工事の作業のうち著しい騒音を発生するもので、政令で定められたものを指します(第2条第3項)。
届け出る中身に、挨拶と直結する行が2つあります。
- 特定建設作業の場所および実施の期間
- 騒音の防止の方法
つまり業者は、いつからいつまでやるか、騒音をどう抑えるかを、すでに紙に書いています。挨拶の前にその内容を聞いておけば、近所に伝える言葉がそのまま決まります。
届け出るのは工事を施工する者、つまり業者です。施主が出すものではありません。
② 建設リサイクル法の届出(出すのは施主)
もうひとつが建設リサイクル法です。一定の規模以上の解体工事は対象建設工事と呼ばれ、着手の7日前までに都道府県知事あての届出を出すことになっています(第10条)。
この届出に義務があるのは施主のほうです。実務では業者が代行する形が多く、そのときは委任状を渡します。
詳しくは解体の見積もりで先に確かめる4つにまとめました。
届出の主体が2つで違うのが、ここのややこしいところです。騒音は業者が市町村へ、リサイクルは施主が都道府県へ。挨拶のときに「届出は済んでいますか」と聞くなら、どちらの話かを添えると話が早く進みます。
どこまで回るか
解体はリフォームより範囲が広くなります。重機が入り、トラックが出入りし、期間も数日から数週間に及ぶからです。
目安として考えるのは次の並びです。
- 両隣と、向かいの家
- 裏に接している家
- 工事車両が通る道に面した家
- 駐車場を借りる場合は、その持ち主
道の広さと、重機やトラックが停まる位置で範囲は変わります。だから範囲も、業者と一緒に決めるほうが外れません。
リフォーム工事の場合の範囲はリフォームの近所挨拶|範囲・手土産・のし・タイミングに整理しています。
いつ回るか
先ほどの2つの届出が、どちらも7日前を区切りにしています。
そこから考えると、着工の1週間前までに回り終えている形が、届出の流れとも噛み合います。
直前になるほど、近隣は予定を変えられません。洗濯物、来客、車の出し入れ。相手にも段取りがあります。
粗品について
渡す家もあれば、渡さない家もあります。地域の習慣もあります。
ここでは金額の相場を書きません。地域と関係性で変わるもので、うちが数字を断定できる材料を持っていないからです。業者は同じ地域を何件も回っています。その地域でどうしているかは、そこで聞くのがいちばん確かでしょう。
選ぶときに外れにくいのは、日持ちがして、好みが分かれにくく、かさばらないものです。受け取る側に負担が残りません。
のしを付けるかどうかも、業者に合わせるのが無難です。業者が自社名で回るなら、施主の分だけ形式が違うと、かえって目立ちます。
挨拶のときに伝えることは、3つで足ります
長く話す必要はありません。相手も玄関先で立ったままです。
伝わればいいのは次の3つです。
- いつからいつまでか|届出に書かれている実施の期間がそのまま使えます
- どんな音と振動が出るか|重機を使う日と、手作業の日では出方が違います
- 何かあったときの連絡先|業者の現場担当と、施主本人のどちらに言えばいいか
このうち3つ目がいちばん効きます。言う先が決まっていれば、近隣はまず市役所ではなく、こちらへ連絡してくれるからです。
逆に、連絡先を伝えていないと、困ったときに向かう先が役所になります。そこから工事の段取りが変わることがあります。

工事が始まってから起きやすいこと
挨拶を済ませても、途中で話が出てくることはあります。たとえば次の3つです。
ほこりと洗濯物
散水をしていても、風向きで飛ぶ日はあります。重機を使う日が分かっているなら、その日だけ先に一声かけておくと、受け取られ方が変わります。
工事車両の出入り
道が狭いと、トラックが停まる時間帯に車を出せない家が出ます。出入りの時間帯を先に伝えておくと、相手は予定を動かせます。当日に言われると動かせません。
塀やブロックの境目
隣との境にある塀やブロックは、どちらの所有かがはっきりしないことがあります。解体の範囲に入るのか入らないのかは、着工の前に、業者と隣家の両方に確かめておくところです。あとから戻すのは難しくなります。
境界そのものの話は空き家の買取で減額される3つの理由でも触れています。
挨拶をしないと、どうなるか
法律の義務ではないので、挨拶をしないこと自体に罰則はありません。
ただ、騒音規制法の第15条は、特定建設作業の騒音が基準に適合せず周辺の生活環境が著しく損なわれると市町村長が認めるときに、騒音の防止の方法を改善すること、または作業時間を変更することを勧告できると定めています。
勧告に至る前の段階で、近隣から市役所へ連絡が入ることもあるでしょう。そうなると工事の段取りが変わり、工期にも響きます。
挨拶は、そこへ行く前のひとことだと考えると位置づけが分かりやすくなります。
よくある質問
Q. 挨拶は施主も行くべきですか
決まりはありません。ただ、工事が終わったあとも隣に住み続けるのは施主のほうです。行けるなら一緒に回る形が、あとの関係に効きます。遠方で行けない場合は、業者に自分の名前を伝えてもらう形もあります。
Q. 空き家の解体でも挨拶は要りますか
住んでいなくても、工事の音と振動と車両は同じように出ます。隣に住んでいるのは今も人です。所有者が遠方の場合は、業者が回るときに施主の連絡先を伝えてもらうと、何かあったときに話が早くなります。
Q. 何時から工事をしていいですか
騒音規制法は、作業時間の区分や区域の区分ごとに環境大臣が基準を定めると書いています。実際の時間帯は地域で違うので、お住まいの市町村の環境担当の窓口か、業者に確かめてください。
Q. 近隣から苦情が来たら、誰が対応しますか
まず業者です。騒音の防止の方法を届け出ているのも、現場を動かしているのも業者だからです。契約の前に、苦情が来たときの窓口を誰にするかを決めておくと、当日あわてずに済みます。
リフォーム工事の場合の電気と水道の扱いはリフォーム工事中の電気と水道は誰が払う|契約の前に決めておく4つに整理しています。
工事が始まってから音のことを言われた場合はリフォームの騒音で苦情が来たら|謝る前に確かめる3つにまとめました。
まとめ|粗品より先に、届出の中身を聞く
解体の近所挨拶で先に決めるのは、品物ではありません。
誰が回るか。いつ回るか。どこまで回るか。この3つを業者と決めて、そのうえで届出の中身、つまり工事の期間と騒音を抑える方法を聞いておきます。
その2つが言えれば、近所に伝える中身はもうそろっているはずです。粗品は、そのあとで決めて間に合います。
根拠にした出典は、e-Gov法令検索の騒音規制法第2条・第14条・第15条(2026年9月22日に確認)と、建設リサイクル法第10条(2026年9月9日に確認)です。


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