「お宅の屋根、太陽光に向いていますよ」「今なら設置費が無料です」
突然の訪問でそう言われて、その日のうちにサインを迫られる。太陽光発電の訪問販売をめぐる相談は、いま全国で増えています。
先に結論から言います。訪問販売の太陽光は、その場で契約しないのが唯一の正解です。太陽光そのものが悪いわけではありません。問題は「今日決めさせる」売り方のほうです。
この記事では、元大工で中立の立場のおさむが、太陽光の訪問販売でよく使われるセールストークの見分け方と、屋根を知る側から見た「載せる前に確かめること」を、公的機関の注意喚起をもとにまとめます(2026年7月16日に国民生活センター・消費者庁の公表情報を照合)。
なぜ「その場で契約しない」だけでいいのか
玄関先で、その業者が本物かどうかを見抜く必要はありません。突然来た相手とは契約しない、と決めておくだけで足ります。
太陽光や蓄電池は、数十万円から数百万円になる高い買い物です。国民生活センターも、突然の訪問で急かされてもその場で契約せず、複数の会社から見積もりを取って比べるように呼びかけています。
裏を返すと、本当に良い話なら数日待っても消えません。「今日だけ」で消える条件は、はじめから急がせるための道具だと思ってください。
太陽光の訪問販売で多いセールストーク

手口は年々変わりますが、共通するのは、不安かお得感のどちらかで考える時間を奪うことです。国民生活センターに実際に寄せられた相談から、太陽光ならではのものを挙げます。
「点検が義務化された」と無料点検にくる
いま急増しているのがこれです。国民生活センターは2025年6月4日に、太陽光発電システムの点検商法が増えていると注意喚起を出しました。相談件数は2022年度の154件から、2024年度は613件に増えています。
「法律で点検が義務になった」と言って無料点検に入り、パネルの洗浄やコーティングの契約を迫る流れです。実際には、点検が義務の対象になるかどうかは、使っている制度(FIT・FIPという国の電気の買取制度)や設備の大きさで変わります。「義務化されたから今すぐ」は、そのまま鵜呑みにしないでください。
「売電収入で実質まかなえる」と収支を約束する
「売った電気の収入でローンの支払いが相殺される」という説明も、相談の多い型です。国民生活センターは、訪問販売では売電収入のメリットだけを過剰に説明する例が目立つ、と指摘しています。
売電の収支は、屋根の向き・天気・周りの環境・制度の条件で変わります。発電した電気を家庭用に変える機械(パワーコンディショナ)の寿命や、電力会社の線につなぐ手続きの可否まで含めて考える必要があり、その場のシミュレーション1枚では決められません。
「今なら無料」「補助金が出る」「あと2件だけ」
「今なら工事費・設置費が無料」「国の補助金が出るので安くなる」「安く契約できるのはあと2件」も、国民生活センターの相談事例にそのまま並んでいます。
「補助金の申請は代行する」と言われたのに、実際は申請されていなかったという相談もあります。お金や制度の話は、業者の口約束ではなく公式で自分から確かめるのが安全です。なお「無料」を強調して契約へ近づける型は、屋根修理をかたる詐欺でも定番です(屋根修理の詐欺|典型的な手口5つもあわせて)。
「市から来ました」「電力会社の関連会社です」
役所や大手の名前を出して信用させる言い方も報告されています。所属と名前、訪問の目的は、玄関先で必ず確認しましょう。
「契約するまで帰らない」と言われたら
強い口調で居座られると、断りづらくなります。でも、契約しないと伝えたのに勧誘を続ける行為は、特定商取引法(訪問販売のルールを定めた法律)で禁じられています。いったん「契約しません」と意思を示せば、その場で勧誘を続けることも、後日また勧誘に来ることも禁止です。
帰ってくれないなら、退去を求めていい相手です。しつこい営業の具体的な断り方は、しつこい訪問販売の断り方とクーリングオフにまとめています。
元大工の見方|太陽光は「屋根を見てから」
ここからは、屋根を扱ってきた側からの話です。太陽光のパネルそのものより先に、載せる屋根の状態を見てほしいのです。
私は大工の見習いだった頃、古い家の解体や下地づくりで屋根に関わってきました。そこで身にしみたのは、屋根は表面より下(防水紙や下地)から先に傷むということです。
確かめたいのは4つ。屋根の向き、屋根材の種類、家の築年数、そして屋根の残り寿命です。
とくに大事なのが残り寿命です。寿命の近い屋根にパネルを載せると、屋根を葺き替える時にパネルを一度外し、また載せ直すことになります。その脱着にも足場にも、別のお金がかかります。
先に屋根、あとで太陽光。この順番を逆にすると、二度手間と二重の出費になりやすいのです。営業トークに屋根の話がまったく出てこないなら、その一点だけでも持ち帰る理由になります。瓦屋根で傷みが気になる場合の費用の目安は、瓦屋根の修理費用|症状別の目安で確認できます。
それでも興味が湧いたら|1社即決でなく順番で

太陽光に前向きになったとしても、訪ねてきた1社にその場で決める必要はありません。順番だけ守れば、慌てずに選べます。
まず屋根の状態を、その業者とは別に自分で確かめる。次に複数の会社で発電量や費用の試算を出してもらい、同じ条件で見比べる。制度や補助金は公式サイト(自治体や国の窓口)で確認する。そのうえで決める。この順です。
売電や電気代の「お得額」は、条件しだいで変わります。数字を断定してくる相手より、条件を丁寧に説明してくれる相手のほうが信用できます。
契約してしまったら|クーリングオフ
もし契約してしまっても、あきらめないでください。訪問販売の契約は、契約書面を受け取った日を含めて8日以内なら、無条件で解約できます(特定商取引法のクーリングオフ)。工事が始まっていても、原則この期間内なら解約でき、違約金もかかりません。
8日を過ぎても、うそや強引な勧誘があった場合は解約できることがあります。まずは1人で抱えず、局番なしの188(消費者ホットライン)に電話を。最寄りの消費生活センターにつながります。
📞 困ったら消費者ホットライン「188(いやや!)」へ。最寄りの消費生活センターにつながります。
解約や違約金の考え方は、リフォームは契約後でも解約できる?違約金の注意点で詳しく説明しています。
よくある質問
Q. 訪問販売の太陽光は全部悪質ですか?
A. そうではありません。太陽光そのものにも、まじめな会社にも問題はありません。危ないのは、突然来てその場で契約させる売り方です。訪ねてきた相手とは契約しない、と決めておけば大丈夫です。
Q.「売電で元が取れる」は本当ですか?
A. 条件しだいで、断定はできません。屋根の向きや天気、制度、機器の寿命で収支は変わります。国民生活センターも、売電のメリットだけを強調する説明に注意を促しています。1社の試算だけで決めず、複数社で比べましょう。
Q.「点検が義務になった」と言われました。
A. 点検が義務の対象かは、使っている制度や設備の大きさで変わります。「義務化されたから今すぐ契約」は急がず、点検が本当に必要かをまず確かめてください。国民生活センターが2025年に注意喚起した、いま増えている手口です。
Q. 断ったのに何度も来ます。
A. 契約しないと伝えた後の勧誘は、特定商取引法で禁止されています。会社名と担当者名を控え、しつこいときは188や警察に相談しましょう。
まとめ
- 太陽光の訪問販売は、その場で契約しない。これだけで多くのトラブルは防げます。
- 多い手口=「点検が義務化された」無料点検/「売電で実質まかなえる」/「今だけ・あと2件」で急かす。急がせる話は持ち帰る。
- 元大工の目線=パネルより先に、屋根の残り寿命を見る。古い屋根に載せると二度手間になる。
- 興味が出たら、屋根の確認→複数社の試算→公式で制度確認→それから決める、の順で。
- 契約しても8日以内はクーリングオフ。困ったら188へ。
迷ったら、まず「今日は決めません」と一言だけ。話はそこからで十分です。
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運営者の経歴や、なぜ中立に書けるのかは 運営者情報(元大工のおさむ) をご覧ください。
出典:国民生活センター(2025年6月4日公表「太陽光発電システムの点検商法が急増!」、2021年6月3日公表「家庭用蓄電池の勧誘トラブルにご注意!」、消費者トラブル解説集「突然訪問されて太陽光発電設備と家庭用蓄電池を契約した」「売電収入をアテにして契約した太陽光発電システム」)、消費者庁 特定商取引法ガイド(訪問販売・再勧誘の禁止・クーリング・オフ)。2026年7月16日に各公式サイトで内容を照合しました。制度の詳細は各公式でご確認ください。


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