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災害で傷んだ実家を前に、「名義が親のままだから、まず相続登記をしないと」と言われて止まっている方へ。
結論から書きます。公費解体の申請に、事前の相続登記は要りません。環境省が自治体向けに出している質疑応答集に、そう書かれています。
登記していない家も、抵当権が残っている家も、同じです。手続きが要るのは市町村の側で、申請する人が先に登記を済ませておく必要はありません。
元大工見習いで、ホームセンターの売り場に8年いたおさむが、環境省の公費解体・撤去マニュアルと質疑応答集、自費解体の手引きの原文をあたって、中立の立場で整理しました(2026年8月30日照合)。
まず結論|止まりやすい5つは、どれも先に片づけなくていい

この早見図は、出典として本記事(リフォーム補助金・業者選びガイド)へのリンクを付けていただければ、ブログ・SNS・社内資料への転載を歓迎します。
順に中身を見ていきます。その前に、そもそも公費解体とは何かを短く押さえておきましょう。
3つの解体|公費解体・自費解体・緊急解体
被災した家の解体は、大きく3つの形で扱われます。
- 公費解体:市町村が所有者に代わって解体・撤去する形です。環境省の言葉では、生活環境保全上の支障の除去、二次災害の防止、被災者の生活再建支援のための措置とされています
- 自費解体:先に自分で業者に頼んで壊し、あとから市町村に費用の払い戻し(費用償還)を申請する形です
- 緊急解体:今にも倒れそうで放っておけない家を、先に壊す形です
どれになるかは、被害の程度と、その市町村がどう制度を組んだかで決まります。名前も窓口も市町村ごとに違うので、最後は住んでいる市町村の災害関連のページで確かめてください。
対象になるのは全壊。半壊は災害の指定しだい
補助の対象は、もともと全壊した家屋です。質疑応答集には、明らかに廃棄物と観念できる全壊家屋の解体費を従来から補助対象としている、とあります。
半壊の家屋については、大量の災害廃棄物の発生が見込まれ、その災害が特定非常災害に指定された場合に補助対象になる、というのが国の整理です。だから同じ半壊でも、災害によって扱いが変わります。
ここでいう区分は、国が定めた基準で市町村が判定するものです。全壊、大規模半壊、中規模半壊、半壊の4つに分かれていて、後ろの3つをまとめて半壊として扱っています。
解体で出た廃棄物の収集や運搬、処分の費用も補助対象に入っています。
名義や登記で止まらないための5つ
ここからが本題です。うちの読者からいちばん多いのは、相続や名義でつまずく話です。環境省の質疑応答集は、そこにはっきり答えていました。
① 相続登記は、申請の前に済ませなくていい
所有権の登記名義人が亡くなっている場合について、質疑応答集はこう書いています。
家屋等の所有権の登記名義人が亡くなっていても、公費解体の申請に当たって事前に、相続登記の申請をする必要はない。
出典:環境省「公費解体・撤去に関する質疑応答集」問9(2026年8月30日に原文を確認)
相続登記そのものは2024年から義務になりましたが、それと公費解体の申請に間に合わせる必要があるかどうかは別の話です。順番として先に登記を済ませなくてよい、と国が書いています。
② 建物性が失われていれば、相続人全員の同意も要らない
同じ問9の続きです。家屋の建物性が失われている場合には、登記名義人の法定相続人全員の同意は不要とされています。
建物性が失われていない場合で、法定相続人全員の情報が必要なときは、戸除籍謄本や、法務局で発行された法定相続情報一覧図などの書類で確かめる形になります。
建物性が残っているかどうかを決めるのは市町村です。自分で判断するところではありません。ただ、相続人全員の同意が要ると聞いて諦めた方は、もう一度窓口に確かめる価値があります。
③ 抵当権が残っていても、抹消の登記は要らない
住宅ローンの抵当権や根抵当権が登記に残っている場合も、考え方は同じです。申請の前に抹消の登記をする必要はない、とあります。
建物性が失われていれば担保権者の同意も不要。建物性が残っている場合は、原則としてその担保権者が解体に同意していることを書類で確かめる、という形です。
④ 未登記の家でも、表題登記は要らない
古い家では、建物の登記そのものがされていないことがあります。この場合も、事前に表題登記を申請する必要はありません。
市町村が備えている固定資産課税台帳で所有者の情報を確かめる、と書かれています。
⑤ 空き家で罹災証明が出なくても、道は残っている
誰も住んでいない家は、住家として扱われないために罹災証明書が出ないことがあります。それで対象外だと思い込みやすいところです。
市町村が当該空家を全壊であると判定した場合は補助対象となる。その際、被災証明書や写真など、全壊と判断したことを証する書類が必要である。
出典:同 問24(2026年8月30日に原文を確認)
写真が要る、という点は覚えておいてください。片づけたり壊したりする前の状態を撮っておくことが、あとで効いてきます。
なお罹災証明書と被災証明書は別物です。罹災証明書は住家の被害の程度を市町村が証明するもの、被災証明書は住家以外(事業所、店舗、倉庫、土蔵、神社、仏閣など)が被災した事実を証明するもの、と整理されています。
先に自分で壊してしまった人へ|費用の払い戻しがあります

市町村が解体を始める前に、待ちきれずに自分で壊した。この場合でも、負担した費用の払い戻しを市町村に求められる仕組みがあります。環境省の言葉では費用償還、案内では「解体費用の立替えと払戻し」と呼ばれています。
上限は「市が公費解体したと仮定した額」
全額が返ってくるとはかぎりません。償還する額の上限は、市町村がその建物を公費解体すると仮定して算定した額(基準額)です。
基準額は、基本的に解体した家屋の延床面積に、市町村が定める構造別の単価を掛けて算定されます。業者へ支払った金額が上限を上回れば、その差は自己負担になります。
延床面積の根拠は、原則として登記事項証明書か、固定資産税の評価・課税証明書です。
写真とマニフェスト伝票を残す
手引きが挙げている提出書類には、解体前の写真、施工前・施工中・施工後の写真、そして解体廃棄物の処分先が分かるマニフェスト伝票の写しが並んでいます。
運搬費と処分費も、業者が産業廃棄物として処理してマニフェスト等の提出があれば償還の対象に入ります。一方で、収集運搬だけを頼んだ場合や、片づけを手伝ってくれた方に払った謝礼は、対象になりません。
つまり写真と伝票が残っているかどうかで、返ってくる額が変わります。壊す前に撮る、伝票は捨てない。この2つだけは先にやっておいてください。
受付が始まったあとに壊した場合
市町村が公費解体の受付を始めたあとに自費で壊した場合はどうなるか。質疑応答集は、市町村が要綱で「いつまでに業者と契約したものを対象とするか」を定めたうえで、その期限までに契約していれば対象になる、としています。
期限は市町村が決めるものなので、ここも窓口で確かめる部分です。
家の中の物はどうなるか
解体と一緒に、家の中の物も片づくのかどうか。ここにも答えが書かれていました。
貴重品や思い出の品など必要なものは、工事の前に自分で持ち出す必要があります。一方、災害で傷んで処分するしかない家財や家電は、災害廃棄物とみなして家屋の解体と併せて撤去する場合、補助対象になります。
平常時の解体だと、家の中の物の扱いはまったく別の話です。そちらは家の解体はどこまで片付けるかの記事にまとめました。災害の場合と平常時では線の引き方が違うので、混ぜないようにしてください。
それでも対象にならなかったら
被害の程度が届かない、災害の指定がない、その市町村が制度を実施していない。こうした理由で対象外になることはあります。
その場合は、自分で費用を出して壊すことになります。解体は業者によって金額の差がとても大きい工事です。私も見習いのころ解体の現場に入りましたが、同じような家でも重機の入れ方や廃材の運び出し方で、日数はまるで違いました。
- 相場と内訳は家の解体費用の相場と補助金の記事にまとめています
- まとまった費用の用意が重いときの順番は解体費用が払えないときの4つの順番で整理しました
- 兄弟で話がまとまらないときの進め方は実家の処分で兄弟と揉めないための順番にあります
この下でご案内するのは広告です。公費解体の対象になりそうな方は、先に市町村の窓口へ行ってください。そちらのほうが確実です。
▶ 自分で費用を出して壊すと決めたなら、まず相見積もりから:解体工事比較ナビ(解体業者の一括見積もり・無料)で、まとめて依頼できます。あとから費用償還を申請する可能性が残っているなら、見積書と契約書、そして写真を必ず手元に残しておいてください。
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相続登記をしていないと申請できないと言われました
環境省の質疑応答集では、公費解体の申請に当たって事前に相続登記の申請をする必要はない、とされています。窓口での案内が違った場合は、この質疑応答集の問9を示して確かめてみてください。
ただし建物性が残っている場合は、法定相続人の情報を求められることがあります。要るのは登記ではなく情報の確認です。
「建物性が失われている」とは、どういう状態ですか
判定するのは市町村です。この記事で線を引くことはできません。市町村が土地家屋調査士に判断を委託する場合があることが、質疑応答集にも書かれています。
自分の家がどちらなのかは、窓口で聞くのが早い道です。
まだ解体していません。今のうちにやっておくことはありますか
写真です。傷んだ状態が分かる写真を、外からも中からも撮っておいてください。空き家で罹災証明が出ない場合も、自費で壊してあとから償還を申請する場合も、写真が判断の材料になります。
それと、貴重品や思い出の品は工事の前に持ち出す必要があります。片づけるついでに、先に抜いておいてください。
半壊でも使えますか
その災害が特定非常災害に指定された場合に補助対象になる、とされています。指定されているかどうかは災害ごとに違うので、市町村の案内で確かめてください。
この記事に、私の市の受付期間や金額は書いていないのですか
書いていません。制度の枠組みは国が示していますが、受付の期間、必要な書類、窓口の名前は市町村が決めるもので、災害のあいだは日々更新されます。
古い数字を置いておくほうが害になるので、この記事では国の枠組みだけを書きました。あなたの市町村の今の状況は、市町村の災害関連のページと窓口で確かめてください。
まとめ
名義や登記でつまずいて止まっている方に、伝えたいことは1つです。先に片づけないといけないと思っていたものは、たいてい先でなくていい。
- 相続登記は、公費解体の申請の前に済ませる必要はない
- 建物性が失われていれば、相続人全員の同意も、担保権者の同意も要らない
- 未登記の家でも、表題登記は要らない。市の固定資産課税台帳で確認される
- 空き家で罹災証明が出なくても、市が全壊と判定すれば対象になりうる。写真が要る
- 先に自分で壊した場合も、費用の払い戻しを申請できる。上限は市が算定する基準額まで
そのうえで、受付の期間と必要な書類は市町村ごとに違います。この記事を持って、市町村の窓口で確かめるところから始めてください。


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