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「解体を頼んだら、あとから追加で請求された」
解体のトラブルを調べると、出てくるのは騒音や粉じん、ご近所からの苦情の話が多いです。それも大事な話ですが、施主が実際にいちばん困るのは、お金のほうだと思います。
この記事はお金の話だけを書きます。追加費用、見積もりの読み方、業者が倒産したとき、そして法律で施主自身に課されている届出まで。元大工で、いまは中立の立場で書いているおさむが整理します。
除却(じょきゃく)は取り壊しのことです。
お金のトラブルは、3つの時点で起きます

順番に見ていきます。どこで何が起きるかが分かれば、防ぎ方も決まります。
契約の前|見積書のどこを見るか
解体の見積書で、金額の差が出るのは工事そのものより処分と手間の部分です。ここが書かれていない見積書は、あとから増える余地を残しています。
「一式」だけの見積書は、比べられません
解体工事一式、いくら。この形だと、何が入って何が入っていないのかが読めません。相見積もりを取っても、同じものを比べているのかどうか分からなくなります。
見積書を受け取ったら、次の項目が分かれて書かれているかを確かめてください。
- 建物本体の解体:構造と延べ面積が書かれているか
- 廃材の分別と処分:ここが金額の大きい部分です
- 残置物(家の中に残っている家具や家電)の処分:別料金になることが多い項目です
- 外構:塀、門、物置、カーポート、庭木。建物と別に数えます
- 整地:どこまで平らにするか
- 諸経費:中身を聞いてよい項目です
家の中の物をどこまで自分で出すかで金額が変わります。線の引き方は家の解体はどこまで片付けるかの記事に3本の線で整理しました。
浄化槽は別の手続きが要ります
浄化槽がある家は、解体の見積もりとは別に届出が必要です。使うのをやめたら30日以内、と浄化槽法で決まっています。壊す前に休止という選び方もあるので、浄化槽の撤去は解体費と別扱いの記事にまとめました。
補助金は、あとから振り込まれます
お金の流れで詰まりやすいところなので、書いておきます。解体の補助金は工事が終わって、報告して、確定してから振り込まれるのが原則です。つまり工事の代金は、いったん自分で全額を払うことになります。「補助が出るから、その分は払わなくていい」ではありません。
ここで使えるのが代理受領という仕組みです。補助金にあたる分を、市町村から業者へ直接払ってもらう形で、自分は差額だけを用意すれば済みます。うちが県ごとに公式を確かめてきた範囲では、福井市・坂井市・新潟県上越市・香川県坂出市・石川県・島根県・栃木県・高知県・和歌山県の市町村などにこの仕組みがありました。坂出市は旧耐震の枠の様式に「補助金の代理受領の委任状および同意書」を用意しています。
ただし、どの市にもあるわけではありません。また業者側が代理受領に対応している必要があります。見積もりを頼むときに「この市の代理受領は使えますか」と業者にも市にも聞いておくと、あとで慌てません。
代理受領が使えない場合は、工事費の全額をいったん用意する前提で資金の段取りを組んでください。補助が決まっていても、入るのは工事のあとです。
工事の途中|追加費用を言われたとき
解体は、壊してみないと分からない部分があります。だから追加費用がすべて不当だとは言えません。よくあるのは次のようなものです。
- 地中から出てくるもの:古い基礎、井戸、浄化槽、埋められたガラなど
- アスベスト:事前調査で見つかれば、除去の費用と方法が変わります
- 想定より広かった:増築部分が図面に無かった場合など
問題は、金額そのものよりその場で決めさせられることです。工事が止まっている状況で「今すぐ返事を」と言われると、断りにくくなります。
その場で返事をしないでください。次の3つを頼んでから決めても、工事は進みます。
- 写真を見せてもらう:何が出てきたのか、現物の写真
- 書面で出してもらう:追加の内容と金額を、口頭でなく紙で
- やらなかった場合どうなるかを聞く:必ず要る工事なのか、やらない選択があるのか
リフォームの場合の考え方はリフォームで追加費用を言われたらの記事で4つの確認に整理しています。解体でも順番は同じです。
工事のあと|廃棄物がどこへ行ったか
解体で出た廃材は、産業廃棄物として処理されます。ここでマニフェストという伝票が出ます。産業廃棄物管理票のことで、いつ誰がどこへ運んで、どう処理したかを記録する紙です。
不法投棄が起きたとき、処理を頼んだ側の責任が問われることがあります。だから、工事が終わったらマニフェストの写しを見せてもらってください。見せられない業者に頼むのは、避けたほうがいい選択です。
公費解体や補助金の払い戻しを申請する場合は、この伝票が提出書類に入っていることがあります。捨てずに残しておいてください。
業者が倒産したとき
前金を払ったあとで業者が倒産すると、お金も工事も止まります。防ぎきることはできませんが、リスクを下げる考え方はあります。
- 前金の割合を確かめる:全額を先に払う契約は避けたいところです
- 登録や許可を確認する:後で書きます
- 契約書を交わす:口約束で始めない
リフォーム会社が倒産したときの動き方はリフォーム会社が倒産したらの記事にまとめました。前金と保証の守り方は解体でも考え方が近いです。
登録と許可は、確かめてよいものです
解体工事を請け負う業者には、建設リサイクル法にもとづく解体工事業の登録という制度があります。この法律は第5章がまるごと解体工事業の登録にあてられていて、登録制度を実施することが法律の目的にも書かれています。
登録番号や許可番号を聞くのは、失礼なことではありません。きちんとした業者なら、聞かれて嫌がることはまずないはずです。
意外と知られていない、施主自身の届出

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
建設リサイクル法の第10条には、こう書かれています。対象建設工事の発注者又は自主施工者は、工事に着手する日の七日前までに、都道府県知事に届け出なければならない。
届け出るのは業者ではなく、発注者です。つまり工事を頼んだ側、施主です。
対象になる規模も政令で決まっていて、建築物の解体工事は床面積の合計が80平方メートルが基準です(同法施行令第2条)。建物以外の解体は請負代金が500万円。木造の一戸建てなら、多くの家がこの基準に入ります。
実際には、業者が委任を受けて代わりに出すことがほとんどです。ただし法律上の義務者は施主のほうです。だから契約のときに、こう聞いておいてください。
- この工事は届出の対象になりますか
- 届出はどちらが出しますか
- 出したら、控えを見せてもらえますか
もうひとつ。同じ法律の施行令には、2つ以上の契約に分割して請け負う場合は、1つの契約とみなして基準を適用するとも書かれています(正当な理由がある場合を除く)。工事を分けて基準未満に見せる、という形が通らないようになっているということです。
補助を使うなら、業者を選ぶ順番が変わります
この記事では複数の会社から見積もりを取ることをすすめていますが、補助金を使う場合は、頼める業者が市内や町内の会社に限られることがあります。
全国の自治体が公開している空き家の支援制度を2026年9月9日に数えたところ、現役の除却の制度352件のうち44件で、市内・町内の業者に発注することが条件として読み取れました。北海道砂川市のように市内企業を使った場合だけ補助率が上がる設計や、福島県塙町のように解体工事業の登録を受けた町内業者に限るという書き方もあります。この記事で「登録と許可は確かめてよいもの」と書きましたが、その登録が補助の条件そのものになっている市町村があるということです。
順番はこうなります。先に市町村の窓口で補助に業者の条件があるかを聞き、条件があるならその条件を満たす会社の中で見積もりを比べます。先に業者を決めてしまうと、補助が使えなくなることがあります。補助を使うつもりなら、窓口への確認を先に済ませてください。
困ったときの相談先
業者と話し合っても進まないときは、公的な窓口があります。
消費者ホットライン 188に電話すると、住んでいる地域の消費生活センターにつながります。契約や請求のことで困ったときの入口です。
工事の内容そのものでもめている場合は、各都道府県に建設工事紛争審査会が置かれています。窓口の場所は都道府県の建設業を担当する部署で確認できます。
空き家なら、専門家を無料で呼べる市区町村があります
相談先の話をもう一つ。空き家に関することなら、建築士や弁護士、司法書士などの専門家を無料で派遣してくれる市区町村があります。全国の自治体が公開している空き家の支援制度を2026年9月9日に数えたところ、専門家の派遣や相談窓口の制度が11件ありました。
- 東京都板橋区=建て替え、相続、修繕・改修などの問題に、建築士・弁護士・司法書士・不動産鑑定士などを無料で現地に派遣。複数の専門家に同時に相談できる個別相談会も年5回(参加費無料・事前申込)
- 東京都荒川区=建築士・司法書士・行政書士・宅地建物取引士などを派遣。1回2時間・年度内5回まで
- 東京都北区=空家等総合相談窓口(住宅課)で受付。内容により個別相談も
- 東京都八王子市=市と協定を結んだ不動産の専門家が無料で相談に応じるワンストップ窓口
- 京都市=活用や流通のために、建築士と地域の空き家相談員を現地へ無料派遣。空き家の劣化状況の診断も
- 静岡県三島市=市場に流通できるかを判断するため、不動産の専門家を現地に派遣して市場価値を調査
- 千葉県四街道市=相続や法律、賃貸や売買、草刈りや見回りについて関係団体の専門家が助言
東京に集中しているのが実際のところですが、自分の市区町村にあるかは「地方公共団体による空き家対策支援制度」検索サイト(全国空き家対策推進協議会)で調べられます。
解体の見積もりで納得がいかないとき、いきなり有料で相談する前に、市区町村に窓口があるかを見てください。この記事で書いてきた見積書の読み方も、専門家に現物を見てもらえるなら、そのほうが確かです。(データは前年度のものなので、あると分かったら窓口で確かめてください。)
まとめ|順番はこうです
- 見積書は項目が分かれているかを見る。「一式」だけでは比べられない
- 金額が動くのは処分と外構と整地。残置物は別料金になることが多い
- 追加費用を言われたらその場で返事をしない。写真・書面・やらない選択肢の3つを聞く
- 終わったらマニフェストの写しをもらう
- 届出の義務は施主にある(建設リサイクル法第10条・80平方メートル以上)。誰が出すかを契約のときに決めておく
- 困ったら消費者ホットライン188
そして、いちばん効くのは複数の業者から見積もりを取ることです。1社だけだと、その金額が高いのか安いのか、項目が抜けているのかどうかを判断する材料がありません。
ここから下は広告です。すでに契約していて、その業者ともめている場合は、まず消費者ホットライン188のほうが先です。
▶ これから業者を探すなら、まとめて比較しておく:解体工事比較ナビ(解体業者の一括見積もり・無料)から、複数社にまとめて依頼できます。届出を誰が出すか、残置物が入っているかは、見積もりを取る段階で聞いておくと後が楽です。
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よくある質問
追加費用は、断ってもいいのですか
内容によります。必ず必要な工事なら、断ると工事が止まります。だからこそ「やらなかった場合どうなるか」を先に聞いてください。写真と書面を求めるのは、正当な確認です。
見積書に「諸経費」とだけ書かれています
中身を聞いてかまいません。現場の管理費、届出の手数料、車両の費用などが入っていることがあります。答えられない業者なら、そこを判断の材料にできます。
届出を出し忘れたらどうなりますか
建設リサイクル法は第7章に罰則を置いています。実際にどう扱われるかは事案によるので、ここで断定はできません。大事なのは、届出の義務が発注者にあることを知ったうえで、誰が出すかを契約のときに決めておくことです。
相見積もりは何社くらい取ればいいですか
数の正解はありませんが、1社だけだと比べる材料がありません。項目の書き方が業者ごとに違うので、同じ条件を伝えて出してもらうと差が読めます。


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