空き家は解体してから売る?そのまま売る?|答えが変わる3つの買主と、壊す前に確かめる4つを元大工が中立解説

補助金の基礎知識・申請の流れ

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「古い家が建ったままだと売れない。先に壊したほうがいいのか」

実家を手放すときに、必ず出てくる問いです。

先に結論を書きます。更地にしたほうが売れる、とは限りません。そして解体にかけたお金が、そのまま売値に乗るとも限りません。

どちらが正解かは、家の状態でも築年数でもなく、買主が誰になるかで決まります。元大工で、いまは中立の立場で書いているおさむが、判断の順番を整理します。

除却(じょきゃく)は取り壊しのことです。

先に壊すと、戻せません

空き家は壊してから売るべきかの図。答えは築年数ではなく買主のタイプで変わる。住みたい人にとっては建物があることが価値になり、更地にするとこの層は買えなくなる。建て直したい人は建物を取り壊すものと見ていて、解体費を織り込んで値段を考えている。買い取る会社は壊さずに買うことが多く、会社の側が活用か解体かを決める。先に建物付きで話を聞いてから決める。壊すのは一方通行で、あとから建物付きには戻せない。

この判断がむずかしいのは、解体が一方通行だからです。壊してしまえば、建物付きで売る道は消えます。逆に、そのまま売りに出してから「やっぱり壊そう」に変えるのはできます。

だから順番としては、まず建物付きのままで話を聞いてみるのが安全です。そのうえで壊す判断をしても遅くありません。

買主が誰かで、答えが変わります

中古の家を買う人には、大きく3つのタイプがあります。

1. その家に住みたい人

直して住む前提の買主です。この人にとっては、建物があることが価値になります。更地にしてしまうと、この層は買えなくなります。

古い家でも、直して住みたい人はいます。とくに立地がよければ、建物の状態より場所で選ばれます。

2. 建て直したい人

土地が目当てで、建物は要らない買主です。この人にとって建物は取り壊すべきもので、その費用を負担する前提で価格を考えます。

この層が中心の土地なら、更地にしたほうが話は早くなります。ただし解体費用を出した分だけ売値が上がるとは限りません。買主も解体費用を織り込んで値段を考えているので、結局その分を値引きされることがあります。

3. 買い取る会社

不動産会社が自分で買う形です。建物があってもなくても買う会社があり、傷んだ家や条件のむずかしい土地を専門に扱うところもあります。

この場合、壊す必要がないことが多いです。会社の側が壊すか活用するかを決めるからです。

壊す前に、必ず確かめたいこと

壊す前に確かめる4つの図。土地の税は住宅用地の特例が外れ、売れるまでの期間だけ負担が続く。解体費の中身で動くのは処分と外構のほうで、残置物・塀・門・物置・庭木・整地・浄化槽。市町村の補助は使える市町村があり、金額も受付の時期も市町村ごとにまるで違う。届出の義務は業者でなく施主で、80平方メートル以上は着手の7日前までに。4つ並べてから、建物付きの査定額と、更地の想定額から解体費を引いた額を比べる。

土地の税金が上がります

建物を壊すと、土地にかかっていた住宅用地の特例が外れることがあります。住宅が建っている土地の固定資産税を軽くする仕組みなので、住宅が無くなれば対象から外れる、という理屈です。

仕組みと、上がる条件については空き家の固定資産税は6倍になる?の記事にまとめました。売るまでに時間がかかるほど、この負担が積み上がります。

ちなみに、解体したあとの税額を数年間下げてくれる市町村もあります。全国どこでもある仕組みではないので、お住まいの市町村の税務の窓口で聞いてみてください。

解体費用は「壊す」だけではありません

見積書を取ると分かりますが、金額が動くのは建物本体より処分と外構のほうです。

  • 家の中に残っている家具や家電(残置物)の処分費
  • 塀、門、物置、カーポート、庭木
  • 整地をどこまでやるか
  • 浄化槽があれば、その撤去と届出

家の中の物をどこまで自分で出すかで金額が変わります。線の引き方は家の解体はどこまで片付けるかの記事で3本に整理しました。浄化槽は解体とは別に届出が要るので、浄化槽の撤去は解体費と別扱いの記事もあわせてどうぞ。

市町村の補助が使えることがあります

危険な空き家や古い家の解体に、補助金を出している市町村があります。金額も条件も市町村ごとにまったく違って、受付が春で閉じるところもあれば、年内まで開いているところもあります。

売る前に壊すと決めたなら、先に市町村の窓口に聞いてください。解体の補助金の47都道府県まとめから、お住まいの地域の入口を探せます。

届出の義務は施主にあります

床面積の合計が80平方メートル以上の解体は、工事に着手する日の7日前までに都道府県知事へ届け出ることになっています。建設リサイクル法の第10条で、届け出るのは業者ではなく発注者です。実務では業者が代わりに出しますが、義務者は頼んだ側です。

詳しくは解体業者とのお金のトラブルの記事に書きました。

境界がはっきりしていないと、壊しても売れません

もう一つ、壊す前に確かめておきたいことがあります。土地の境界がはっきりしているかです。

古い家ほど、隣との境界が曖昧なまま何十年も来ていることがあります。建物が建っているうちは誰も気にしませんが、売買のときには境界の確定を求められるのが普通です。境界が決まっていないと、買主が住宅ローンを組めないこともあります。壊して更地にしても、ここで止まります。

測量と境界の確定には、土地家屋調査士に頼む費用がかかります。ここで知っておく価値があるのは、境界の確定に補助を出している市町村があることです。福島県の会津美里町と喜多方市は2分の1・上限15万円、山形県米沢市には隣接地を取得して無接道や狭小の状態を解消する枠、東京都板橋区には無接道敷地の空き家を隣地と統合するための測量・境界明示・合筆の費用を助成する枠があります。ただし多くは空き家バンクへの登録が入口なので、壊して終わりにする場合は当てはまらないことが多いです。自分の市町村に枠があるかは「地方公共団体による空き家対策支援制度」検索サイト(全国空き家対策推進協議会)で調べられます(データは前年度のものなので、あると分かったら窓口で確かめてください)。

大阪府堺市のように、面積や最寄り駅、接する道の幅を入れると解体費用と解体後の土地の売却価格の概算が出る無料のツールを市が用意している例もあります(堺市版すまいの終活ナビ)。こういうものがあれば、業者に聞く前に自分でおおよその形をつかめます。お住まいの市に同じような仕組みがないか、一度見てみてください。

補助を使うと、すぐに売れなくなることがあります

解体の補助を探している方に、金額より先に見てほしい条件があります。補助を受ける代わりに、壊したあとの土地の使い道が決められている制度です。

全国の自治体が公開している空き家の支援制度を2026年9月9日に数えたところ、現役の除却の制度352件のうち26件に、跡地の使い道か譲渡についての条件が付いていました。数としては多くありませんが、当たると影響が大きい条件です。

形はいくつかあります。

  • 跡地の使い道が決められている:千葉県山武市は「特段の事情がない限り、除却後1年以内に跡地を地域の活性化に資する用途か公共的な用途で1年以上活用する事業」が対象。富山市は跡地を地域活性化や地域課題の解決の場として5年以上使うことが条件です
  • 跡地に家を建てることが条件:長野県上田市、飯田市の中山間地域の枠、群馬県桐生市の移住者向けの枠は、跡地に住宅を建てる前提になっています
  • 一定期間、売ったり譲ったりできない:福島県会津美里町は、上限50万円の枠(空家住宅等)だと10年間の譲渡と譲与が禁止されます。兵庫県美浜町のように、交付から1年以内は家族以外へ譲渡・贈与しないことに同意する市もあります

壊してすぐ売りたい方は、ここで詰まります。金額の大きい枠ほど条件が付いていることがあるので、上限額を見る前に「跡地をどうするか」の欄を読んでください。同じ市に条件の無い枠と有る枠が並んでいて、金額が小さいほうなら自由に売れるということもあります。

迷ったら、窓口でこう聞くのが早いです。「この補助を使ったあと、土地をいつから売れますか」と。金額の話より先に、これを確かめてください。

補助金は、あとから振り込まれます

お金の流れで詰まりやすいところなので、書いておきます。解体の補助金は工事が終わって、報告して、確定してから振り込まれるのが原則です。つまり工事の代金は、いったん自分で全額を払うことになります。「補助が出るから、その分は払わなくていい」ではありません。

ここで使えるのが代理受領という仕組みです。補助金にあたる分を、市町村から業者へ直接払ってもらう形で、自分は差額だけを用意すれば済みます。うちが県ごとに公式を確かめてきた範囲では、福井市・坂井市・新潟県上越市・香川県坂出市・石川県・島根県・栃木県・高知県・和歌山県の市町村などにこの仕組みがありました。坂出市は旧耐震の枠の様式に「補助金の代理受領の委任状および同意書」を用意しています。

ただし、どの市にもあるわけではありません。また業者側が代理受領に対応している必要があります。見積もりを頼むときに「この市の代理受領は使えますか」と業者にも市にも聞いておくと、あとで慌てません。

代理受領が使えない場合は、工事費の全額をいったん用意する前提で資金の段取りを組んでください。補助が決まっていても、入るのは工事のあとです。

安く売るときこそ、税金が100万円分軽くなる制度があります

実家の土地が安くしか売れない。この記事を読んでいる方の多くが、そこで気持ちが折れます。ただ、安く売るからこそ使える税の特例が1つあります。低未利用土地等の譲渡所得の特別控除といいます。

中身はかんたんです。一定の条件を満たす土地を売ったとき、長期譲渡所得から100万円を差し引けるというものです。令和2年度の税制改正でできました。

大事なのは、売った値段に上限があることです。ここが他の特例と逆で、高く売れた人ではなく、安くしか売れなかった人のための制度になっています。

  • 原則は、売った金額が500万円以下であること(土地と、その上にある建物などを一緒に売った場合は、その合計額で見ます)
  • 市街化区域や用途地域が定められた区域などにある土地は、800万円以下まで。これは令和5年1月1日から令和10年12月31日までのあいだの譲渡に限られます

ほかの条件も並べておきます。売るのが個人であること。売る相手が配偶者など特別の関係がある人ではないこと。売った年の1月1日の時点で、所有していた期間が5年を超えていること。そして、その土地が都市計画区域の中にある低未利用土地等であることです。低未利用土地というのは、使われていないか、周りの同じような土地に比べて使い方の程度が著しく劣っていると認められる土地のことをいいます。

手続きで押さえるところは1つだけです。市区町村が出す「低未利用土地等確認書」が要ります。窓口は市町村の住宅や建築の担当課であることが多く、確定申告のときにこの確認書を添えます。売ってから慌てて取りに行くより、売る話が進み始めた段階で、自分の土地が対象になりそうかを窓口に聞いておくほうが順番として楽です。

制度の詳しい要件は国土交通省の「土地の譲渡に係る税制」のページに出ています(2026年9月9日に確認)。税額がいくら変わるかは、その方の所得や他の控除との組み合わせで変わります。金額の計算は税務署か税理士に確かめてください。この記事で書けるのは、そういう制度があることと、確認書を出すのは市町村だということまでです。

更地にしてから売るか、建物を残して売るかで、この特例が使えるかどうかが変わるわけではありません。ただ、土地の値段が下がるほど、100万円の控除が効いてくる割合は大きくなります。安く手放すことになりそうな土地ほど、先に窓口で聞く価値があります。

判断の順番

  1. 建物付きのまま、いくらで売れそうかを聞く:ここが出発点です。壊すのはいつでもできます
  2. 解体の見積もりも取ってみる:処分費と外構を含めた金額を知らないと比べられません
  3. 補助金があるか市町村に聞く:あるなら解体の負担が変わります
  4. そのうえで、差額を比べる:更地にした場合の想定価格から解体費用を引いた額と、建物付きで売れる額を並べます

この4つを並べてから決めれば、あとで悔やむことは減ります。

それぞれの入口

ここから下は広告です。どちらを選ぶかは、上の4つを確かめてから決めてください。

▶ そのままの状態で、いくらになるか知りたい:傷んだ家や、条件がむずかしい土地を専門に扱う会社があります。他社で断られた物件でも買取りが可能「ワケガイ」という会社があります。まず査定を出してもらって、建物付きの金額を知るところからです。

▶ 壊す方向で考えるなら、先に相見積もりを:解体は業者によって金額が動きます。1社だけだと、その金額が高いのか安いのか判断する材料がありません。

解体工事比較ナビ(解体業者の一括見積もり・無料)

見積もりを取る段階で、残置物が入っているか、届出はどちらが出すかを聞いておくと後が楽です。

まとめ

  • 更地にしたほうが売れる、とは限らない。買主が誰かで答えが変わる
  • 解体費用がそのまま売値に乗るとは限らない。買主も解体費を織り込んで値段を考えている
  • 解体は一方通行。先に建物付きで話を聞いてから決めても遅くない
  • 壊すと住宅用地の特例が外れて土地の税が上がることがある。売れるまでの期間だけ負担が続く
  • 解体費用は処分と外構で動く。市町村の補助が使えることもある
  • 届出の義務は施主にある(建設リサイクル法第10条・80平方メートル以上)

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よくある質問

古家付きのままだと、本当に売れませんか

売れないと決まっているわけではありません。直して住みたい人や、買い取る会社が相手なら建物があっても話は進みます。むしろ更地にすると、直して住みたい層が買えなくなります。

解体費用は売る側と買う側、どちらが出すのが普通ですか

決まりはありません。売主が壊して更地で引き渡す形も、買主が壊す前提で価格を決める形もあります。どちらにするかは交渉の中身なので、先に不動産会社に「この土地はどちらが多いですか」と聞くのが早い道です。

解体してから売るまでに、どのくらい時間がかかりますか

工事の規模や業者の予定で変わるので、ここで期間を断定はできません。ただし壊したあとは土地の税が上がることがあるため、売れるまでの期間が長いほど負担が増える、という点は先に頭に入れておいてください。

残置物があると売れませんか

家具や家電が残っていても、所有権が売主にあれば売却そのものは可能です。ただし買取の査定額や、解体の見積もりには影響します。どちらの道でも、片付けの範囲は先に決めておくほうが話が早くなります。

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